ドロミテ スキーで行くリストランテ 2 (2020-06-08)

大いなるへだたり。文化の違いをまざまざと見せつけられる。

雪山において、スキーにまさる移動手段はないと思う。雪が深ければ、ラッセルの効率的な道具となり、滑降となれば、道具なしではかなえられないスピードで山を駆け降りることができるうえに、大いなる楽しみが伴う。

ドロミテでは、スキーなら、はるか高みから眼下の村、または次の峠の向こうの村を見据え、滑降を始めても想像よりはるかに速く、そして簡単にたどり着くことができる。痛快。雪のドロミテでは、スキーが旅の移動手段なのだ。

さて、リストランテの話の続きだ。ドロミテでスキーでの移動中、無数にある食事処の中から、ここぞと思うところを選ぶ。あまりに数が多いし、ミシュランガイドに出ているわけではないので、あらかじめ調べておいて目星をつけることは難しいし、嗅覚で探すほうが好きだ。得意の行きあたりばっ旅である。それでも、あまり外れたことはないし、特によかったところは、その後も何度も訪れることになる。ガルディナ峠の近くの山小屋もそんなお気に入りのひとつだ。

ここは、カジュアルな雰囲気の中で美味しい車エビのスパゲティを食べさせてくれる。一人前のスパゲティに大型のエビが20匹前後も混じったものだ。エビの中にスパゲティが混じっているといってもいいくらい、エビの大判振る舞いなのだ。日本で食べたら、いったいいくらするだろう。いや、日本ではこんなスパゲティは食べられないだろう。そもそもここは山小屋なのだ。

そんな至福のひとときは、ここが大岩壁に囲まれたドロミテの山中であり、スキー靴を履いていることを忘れてしまう。午後は、暖かい日差しと満腹で集中力の落ちたスキーヤーが、広大なピステをゆるゆると滑り降りて行くことになる。