チェコのエルベ砂岩塔群 (2021-11-22)

ドイツのフランクフルトからチェコのプラハへ向かった。

国境を越えチェコに入ると、それまでの鋼鉄のような道路が、急に荒れた田舎道に変わる。おなじ田舎の田園風景なのにあきらかに景色は一変した。走る車まで、見慣れたベンツやBMWはなくなり、知らないメーカーの古いポンコツが多くなった。昼食に立ち寄ったレストランでは、まったく言葉が通じず、となりの席で食事している人と同じメニューを指さした。

プラハの高級ホテルに泊まりカレル橋を散策し、ボヘミアのエルベ砂岩塔群を訪れてから旧東ドイツ 黒い街ドレスデンに着いた。言葉が通じず、当時カーナビなどはなかったが、めずらしく順調にいった東欧の短い旅行だった。ただ、チェコもドレスデンも風景のカラーは暗く灰色で、当時若かった僕にでもきびしく悲しい歴史を感じさせた。

写真のエルベ砂岩塔は、チェコのボヘミアと旧東ドイツ ザクセンとの国境に位置し、ザクセンのスイスあるいはボヘミアのスイスと呼ばれる景勝地だ。スイスと名がつくが、本場スイスの片りんもないほど風景は結びつかない。丘陵地帯の低地の森にエルベ川が流れ、奇怪な高さ数十メートルの岩塔群が林立している。そしてここは、ヨーロッパでもっとも歴史のあるスポーツクライミングのエリアで、ほかに類をみないクライミングができるようだ。

通常、ルートには2~3メートルおきにステンレス製のボルトがあらかじめ設置されるか、カムやナッツ類のプロテクションを自分で設置する。エルベ砂岩塔群は柔らかい岩質のため、これらのプロテクションは設置できず、代わりに吊り輪のような大きな鉄製のリングボルトが5~8メートルほどのかなり遠い間隔で、ルートによっては1本あるいは2~3本打たれている。これは、グラウンドフォールの危険を伴うかなり冒険的なルートといえる。おまけにチョークは禁止で、黒い色の岩質にホールドの痕跡を見つけづらい。

ここは、全体に難度も高く、それなりのレベルと自信が試されるエリアであり、クライマーはその歴史とグレードの重みを知ることになるだろう。

写真は、古いポジフィルムをデジタルデータで。