ヨセミテ国立公園その2 トゥオラミメドゥズ キャンプ場 (2015-09-09)

トゥオラミメドゥズは、シェラネバダ山脈のなかのヨセミテ国立公園を横断する唯一の道路のタイオガ峠に近い標高2700mの山上の草原地帯だ。このようなシェラネバダ山脈の2000m以上の高山地帯をハイシェラとよぶ。トゥオラミメドゥズのトゥオラミとは、この地の先住民のことで、われわれ日本人にはもちろんのこと、米国の人にも発音は難しい。

ハイシェラは、バックパッカー、日本でいう登山者の世界で、観光客でにぎわう壮大無比なヨセミテ渓谷とは、ちょっと雰囲気が違う。ヨセミテ渓谷では、チェックイン1時間、ピザにありつくのに30分、レジ待ち20分、まずい食事など少々の不満がある(しかたがない程度、満足のほうがずっと大きい)。ハイシェラでは、自分で計画を立て、キャンプそして自炊なので、不満も満足も自分次第だ。

トゥオラミメドウズは、ヨセミテの山中を歩くバックパッカーにとって、オアシスのようなところだ。日帰りから数日、ジョンミュア トレイル340km、パシフィッククレスト トレイル(なんとメキシコ国境からカナダ国境まで4,260kmにおよぶ気の遠くなるようなスケール)まで、さまざまなバックパッカーがお腹を空かしてトゥオラミメドウズのハンバーガーをめざして歩く。

ここには、小さなコンビニ、グリルという小さなハンバーガーショップ、あらかじめ送った荷物を預かる小さな郵便局(ロングトレイルを目指すものにはとても重要な中継地)がある。コンビニでは冷たいビール。そして、グリルでは、とびっきりうまいハンバーガーとソフトクリームが楽しめる。

僕たちのベースとなるキャンプ場は、このバックパッカーのオアシスの裏手に広がる。清潔なトイレと水道と車を乗り入れるスペース、テーブルとたき火の炉があるだけのシンプルなところだ。トゥオラミ川が森の中を静かに流れ、シェラネバダを吹き抜ける乾いた風と松のにおい、静けさ、満天の星空、コヨーテの遠吠え、明け方の冷え込み、手軽にヨセミテを体験できるキャンプ場だ。ヨセミテの大自然に惹かれるのは、人を包み込んでくれるような優しさがあるからだと思う。どこまでも歩きたいと誰かが言う。また来たいと誰かが言う。訪れるたびにまた来られたことを喜び、帰るときには一抹の寂しさを覚えるのは、僕だけではないだろう。