ピレネー山脈はイベリア半島をスペインとフランスに隔てる大山脈だ。これまで、何度かスペイン側のピレネーの山中を歩いてきたので今年はフランス側を訪れた。ピレネーにはアルプスのように、主役となれるような峰はない。はるか3,000m級の山々が残雪を抱いて続いている。山腹は、緑一色だ。また、ここはキリスト教にゆかりの深い巡礼の道筋でもある。時々、巡礼の道をたどるのだろうか、歩く旅を続けるトレッカーを見かけた。巡礼者の休みどころとなった、おとぎ話に出てくるような中世にタイムスリップした小さな村々は、ちょっとした観光地。それでも時をかさねた空気と静寂を保っていた。
スペインの田舎も素敵なのだが、乾燥している景色だ。フランスの田舎は、まぶしいほどの緑がとても魅力的だ。朝のひんやりした空気は、少し湿度があって田園風景と相まって北海道のよう。帰路のTGVからの車窓は、パリ郊外のシャルルドゴール空港に近づくまで、どこまでも田園風景が広がっていた。この国は、豊かな農業大国でもあることを知らされる。