厳しい。とにかく厳しい。冬の赤岩は、夏の爽快なルートが一変する。吹きつける季節風や寒さが厳しいのではない。ルートが厳しいのだ。たいていのルートが、まったく歯が立たなくなり、手も足も出ない。手袋をはめてつかんだホールドはあいまいで、足元のアイゼンの前爪を岩に乗せても不安定この上ない。

ザイルのトップは極度の緊張を強いられ、もてる技量を最大限に発揮する。冬の赤岩は、困難を求める岩のエキスパートだけに開かれた世界だ。